アメリカと日本の医療システムの違い

(1)医薬分業

日本では診察を受けたらほとんどの場合、その場で薬がもらえます。それは個人病院でも大学の付属病院でも変わりません。病院内に薬局があるからです。したがって診察費と薬代の支払いも一緒に済みます。ところがアメリカでは「医師は診察・薬は薬局」とはっきり分かれています。普通は、医師のもとで診察を受け、治療薬の処方箋(「プリスクリプション」"Prescription" といいます)を受け取ります。患者さんはそれを薬局に持っていって薬を購入します。

(2)ホーム・ドクター

ホーム・ドクター(またはファミリー・ドクター)は、日本でいう「かかりつけのお医者さん」のことで、アメリカではプライマリー・ドクター(Primary doctor)とかプライマリー・フィジシャン(Primary physician)と呼ばれます。「主治医」の意味です。

アメリカで医療を受ける場合は、どんな時でもまずこのホーム・ドクターに相談します。専門医による診察が必要な場合は、ホーム・ドクターが紹介してくれます。入院・手術が必要な場合は、ホーム・ドクターが契約している病院に入院手続きを取ってくれます(アメリカの総合病院というのは、入院や検査を必要とする患者の受け皿・施設であって、風邪やねんざ程度の軽い病気で診察を受けるために行く場所ではありません)。

したがってホーム・ドクター選びは非常に重要です。また、ホーム・ドクターを決めておかないと、いざという時に大変困ることになります。どの医者を選ぶかについては、一般の評判や口コミも参考になりますが、医者本人の経歴など事前調査を怠らない方が良いでしょう。他のあらゆる業種と同じで、日本人の医師というだけで安心してしまうことは危険です。なお、医療保険の種類によっては保険会社が指定する医者の中からホーム・ドクターを選ばなければならない場合があります。

日本では医者は絶対の力を持っていることが多く、患者は全てを任せてしまいます。かかりつけの医者であれば尚更そうです。ところが、アメリカではホーム・ドクターといえどもそのアドバイスに従うかどうかは患者次第であり、納得がいかない場合は別の医者の意見を聞くことも自由です。医者は自分の知識と経験から患者にとって最も望ましいと思われる治療を提供したり、その選択肢を与えることはできますが、最終的に判断を下すのは患者さん自身なのです。

(3)「クローズド・システム/Closed System」と「オープン・システム/Open System」

患者さんが病院に行く場合、日本では外来の担当医が入院の必要があるか否かを判断し、入院することになればその病院で入院します。また、入院中の主治医もその病院の勤務医から決められてしまい、患者さんが自分で主治医を選ぶことはできません。つまり、外部の医師に対して開かれていない(=「クローズ」している)のが日本の医療システムです。

これに対し、アメリカの医療は病院が外部の医師に対して開かれている「オープン・システム」で成り立っています。上で説明したように、病気になったらまずこのホーム・ドクターに相談します。必要な場合はホーム・ドクターが専門医を紹介し、入院・手術が必要な場合はホーム・ドクターが契約している病院に入院手続きを取ってくれます。ホーム・ドクターは毎日、自分のオフィスから病院へ診察に行きます。

そしてこのオープン・システムのため、患者さんはそれぞれの医師、各検査施設、病院、薬局などへ別々に支払いをすることになります(請求書が別々に送られてきます)。

(4)予約制と診察時の注意

アメリカの病院で診察を受けるためには、必ず予約を入れておかなければなりません(緊急の場合を除く)。予約無しでいきなり来た患者を「ウォーク・イン・ペイシェント/Walk-in patient」と呼びますが、予約患者の診察が優先されるので長時間待たなければなりませんし、既に予約が一杯の場合は診てもらえないこともあります。

初めての患者さんは、診察前に様々な書類に記入を求められます。保健に関するものから、病歴やアレルギーの有無、現在の症状に至るまで、詳しく正確に書き込まなければなりません。これまでに入院したり手術を受けたことがあれば、その理由と時期・期間を憶えておく必要があります。英語で記入しなければならない場合もありますから、医療用語が分からない人は辞書を持っていくと良いでしょう(但し、当院で診察を受けられる場合は、辞書の必要はありません)。

また、飲用中の薬があればそれも持参して下さい。たまに自分の飲んでいる薬の名前やその量を把握していない方がいらっしゃいますが、これはドクターが困るだけではなく、本人にとっても危険です。同時に使ってはならない薬があるからです。

分からないことがあれば、何でもドクターに質問して下さい。疑問をもったまま病院を後にするのでは、わざわざ診察を受けに来た意味がないばかりか、気分的にも良くありません。