米国医療事情と日米比較

米国の国家総医療費はGDP(国内総生産)の15%に達し、世界最高額である。総医師数は約80万人で、そのうちの25%を世界各国選り抜きのエリート移民医師が占める。医師以外の医療関係従業者数は1200万人と言われている。これは、量・質の点でも高度資本主義下の産業の重大な部分を形成しており、当然、市場原理が作用する。つまり、医学者、医師、医科大学、医療機関、学会、医院、病院、医師会の間に激烈なる自由競争があり、結果として熾烈な淘汰がある。その恩恵として、資金があれば世界最高の医療が享受でき、「奇跡の治療」を選択することが可能である。そして、それは最高のサービスとしてようやく日本で言われ始めた「クオリティ・オブ・ライフ」をその根本に置いている。

ロバート・上田医師は、1976年に米国名門医大の一つであるボストン大学を卒業、81年にロサンゼルスのシーダーズ・サイナイ・メディカル・センターで外科医としてのトレーニングを終了した。彼はユダヤ系のドクターが支配するこの病院で外科を修了した最初のアジア人である。82年以来、アメリカで最も競争が激しい地区であるビバリーヒルズで外科医として開業しており、同時にシーダーズ・サイナイ及びUCLA医学部で学生と新米の医師を相手に複雑な外科手術について教鞭を取っている。また、数々の専門誌に寄稿したり学会で発表を行うなど、その活動の場は広い。93年、ハイ・クオリティの医療ケアをロサンゼルス在住の日本人にも提供するため「ニッポン・メディカル・クリニック」を設立。このクリニックでは、言葉と文化の壁が医療上の障害となることはない。患者はアメリカ最高レベルの医療サービスを日本語で受けられるのである。

現在、ニッポン・メディカル・クリニックでは(通常の診察・治療に加えて)二つの革命的医療ケアをオファーしている。一つ目は「スパイラルCTスキャン」と呼ばれるもので、これは従来の健康診断や人間ドックに取って代わるものとして大きな注目を浴びている。頭から骨盤までを僅か90秒でスキャン、心臓血管・呼吸器官・消化器官を含む体内の異常を発見することが出来る。この検査はACCESS HEALTHSCAN(アクセス・ヘルススキャン)社が提供しており、ニッポン・メディカル・クリニックでは日本人を対象にしたこのサービスを2000年の2月より開始する。

二つ目はHEALTHADDRESS.COM(ヘルスアドレス・ドット・コム)社の「オンライン・コンサルテーション」である。これは、インターネットを使ったリアル・タイムの医療アドバイスを自宅に居ながらにして受けられるもので、ニッポン・メディカル・クリニックのドクターが日本語でのコンサルテーションを提供する。対象は日本人の患者だけではない。日本の医療関係者がこのサービスを使うことも可能だ。

このように、アメリカには優れた医療があり、(その気になれば)それを手にすることも出来る。日本ではどうだろう? 残念ながら、日本の医学・医療はアメリカのそれと比べ極端に遅れている。最近の例を挙げると、日本で手の付けられない末期癌として放置され、国立病院・大学病院から引導を渡された中年の患者が、当地の病院にて高度先端医療の大手術を受けたあと元気に帰国した。彼からは質の高い人生を送ることが出来るようになったと感謝状を送ってきたが、こういうことが起こるのも、端的に言って医療(医師)のレベルに大きな差があるからだ。米国では医師達は互いに情報を公開しながら技術の向上に日々しのぎを削っており、さもなければ競争から脱落してしまう。それにひきかえ、日本では相互批判が決定的に欠如しており、クオリティ・コントロールもない。また、その秘密・閉鎖性は、日本医学の後進性をもろに表している。いまだに「白い巨塔」の学閥が存在し、厚生省・文部省官僚は閉鎖的で無責任である。また、最も大きな問題は、情報公開・自由競争の規制など法的な制限が医療従業者たちを守り、消費者=患者を犠牲にしていることだ。この構造的自縄自縛の改革は自浄作用によっては不可能であり、他産業界と同様、外圧による変化を待つしかない。

しかし、それが起こるのは遠い未来のことではない。インターネットに代表される世界的情報革命が進む中で、日本だけがこれまでの鎖国状態を保つことは不可能だからだ。アメリカで今後最も成長が期待されている医学の一つに「テレメディスン」(Telemedicine) つまり遠隔医療がある。日本では単に無医村の解消手段としてしか捉えられていないこの新分野は、ボーダーレスな医学・医療情報の交換を可能にする。例えば、上記の二番目のサービスはまさにそれを具体化したものだが、これを使えば患者はどこにいても世界最高の医療アドバイスを手にすることが出来るのである。

患者が、医療界のグローバル・スタンダードを知り、実際に使う。そんな時代はすぐそこまで来ている。

(『財界展望』2000.3 掲載)


医療ひとくちメモに戻る



(c) 1999‐2001 Nippon Medical Clinic