薬品と行政

ほんの数年前まで、日本の薬事行政は、ごく限られた厚生省薬事課および特定大学の教授らで構成される非公開の審議会によって判断・決定されていた。日本の製薬会社は欧米のものに比べて非常に小さい零細企業が多く、充分な臨床研究・試験を施行することができない。戦前の内務省の一部であった厚生省は、他業種企業と同様の「産業保護」を最優先させることで、これに対応してきた。つまり、研究開発は先進欧米諸国に頼り、自らはゾロ品と呼ばれる模倣品を作る。そして、何重もの法的規制によって、海外輸入と外圧から「国産」であるゾロ品を保護してきたのである。その許認可の過程は完全な秘密のベールに覆われており、これによって日本の医療は全世界でも類を見ない「薬漬け」となった。

日本では、全医療費の大半は「薬物」によって消費されている(ちなみに欧米では10%以下、米国では8%に過ぎない)。しかも、化学薬品としての研究と品質管理は行われておらず、過去においては薬事審議会は他の先進国では薬品として認可されたことのない劇薬すら広く許可していた。そのせいでこれまでに数多くの事故が発生しているが、「国民の混乱を招く」とする行政指導によって、一般に報道されることは全くなかった。

こうした制度がはっきりと国民の目に曝されたのが、AIDSにおける厚生省とある大学の教授達による共同謀議である。高級官僚・技官・大学教授・企業責任者など全てが「ある大学」の先輩/後輩関係を持った仲間で、政策決定に影響を及ぼす集団の癒着が引き起こした「人災」だった。

資本主義の成熟と共に必発する「グローバル・スタンダード化」が最近日本でも始まったおかげで、薬事審議会もようやく国際基準に基づく臨床治験と研究を行おうとしている。しかし、欧米並の試験が実施されるまでには何年もの歳月が必要とされることから、それまでは患者が自ら情報を集め、自分を守らなければならない。



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