遺伝子治療

人類の遺伝子がDNAで構成されていることが発表されてからまだ約五十年しか経っていないが、人間が持つ全遺伝子の解析が数年後には終わろうとしている。アメリカは十数年前より膨大な国費を使って遺伝子研究に取り組んでおり、イギリス・フランス・ドイツなどと共に日本も部分的に参加している。この大ジェノム・プロジェクトは、当初2010年前後までかかると考えられていたが、ここ一〜二年で完了する見通しである。アメリカでは一度目標が設定されると開発システムの立ち上げが驚異的に早いが、それを支えるだけの科学技術と思想、リーダーシップを備えている。

ところが、全ての遺伝子が解明されればそれで不治の病、遺伝病やガンがすぐに消滅するのかというと実はそうではない。約80,000といわれる遺伝子のうち、病気と因果関係にあるとされているものは約6,000種で、そのほとんどが実際にどういう役目を果たしているのか、その機能すら分かっていない。さらに、一遺伝子ではなく、ガンのごとく何種類もの遺伝子の関与が疑われる疾病群に対しては、その根本的治療が解明されるまでにはかなりの時間がかかるだろう。

つい最近、米国議会で「遺伝子治療の成果」について公聴会が開かれたが(国家が巨大な投資を行っているから当然である)、そこで遺伝子治療による死亡例が患者の父親によって初めて報告された。その後ただちに六百数十例の深刻な副作用の症例が国立研究所(=議会)に報告されたが、これまで全て隠されていたものである。この出来事は「遺伝子が悪いなら良い遺伝子を体にぶち込めば病気が治る」という単純で粗雑な発想が人間のような複雑な生命系には通用しないことを如実に伝えている。アメリカのコピーを続け、現在、国が巨額の研究費を出している日本でも、これが数年後に大問題となることは必至だ。



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